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そんな私の想いが通じたのか、ハンディさんはすぐにいつもの甘い笑顔に戻って。
「玲央様をこれからもよろしくお願い致します」
堅く、執事らしい振る舞いを見せた。
そのままにこやかに部屋を出て行ったハンディさんの背中を呆然と見つめて。
私も瑠璃ちゃんのベッドを用意しに、自分の部屋へと向かった。
途中でリビングから出てきた玲央と目が合ったけど、私は静かに微笑んで、そのまま言葉を交わさずに通り過ぎた。
あの時、玲央が怒っていた意味がようやく理解できて。
恋愛感情とか、男とか女とか、めんどくさいとは思っていたけど、それ以上に。
怖い、と思ってしまった。
「それじゃ、みんなおやすみー」
私がリビングに入るまでずっとやっていたらしいトランプを強制終了させて。
もう瞼が今にも閉じられそうな瑠璃ちゃんをベッドに運んだ。
「……悠、お姉ちゃん」
「んー?どうした?」
「お兄ちゃんをありがとう。瑠璃も、日本に住みたいなぁ」
「ははっ、そう思ってくれるなんて嬉しいな」
「本当だよ。悠お姉ちゃんが一緒なら、何にも怖くないもん。すごく……安心する」
「そう?ありがとう。さ、明日もたくさん遊ぶんだから、ゆっくり寝てね」
「はーい……」
消えていく瑠璃ちゃんの声は、次第に寝息の音へと変わって行った。
それを確認した私も、下に敷いていた布団の中に入りこむ。
いつものように、長時間放置していた携帯を確認する。
その中には、今日デパートで会った櫂さんと風舞先生の名前があった。
『今日はお会いできて嬉しかったです。ぜひ、またお会いしたいですね』
櫂さんは、やっぱりメールの中でも敬語で絵文字1つ無い、シンプルな内容。
『デパートで会ったときはビックリした。彼氏との時間、邪魔して悪かったな』
あ、そうだ私。
思いっきり嘘ついたんだっけ。
GW明けの学校で何も言われないといいけど、一応いろいろ構えておいて損はないよね。
先生のことだから誰かに言いふらしたりとかはないと思うけど。
とりあえず、2人にもいつものように適当に返信をしておいて。
私も眠りにつくために、瞼を閉じた。
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