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瑠璃ちゃんも自分の花火はほったらかしにして、星の光を放つ花火に釘づけ。
そんな瑠璃ちゃんを見つめるハンディさんの表情は、とても柔らかいものだった。
「……何か、悠にすごく似合う」
「それ、俺も思ったわ」
煌と大和の会話なんて耳に入らないほど、私の視線は花火に夢中。
だからその星の光が消えてしまったときは、寂しさが風のように心を撫でた。
「消えちゃったぁ……」
「でもすごくキレイだったね。築茂、ありがとう」
「……あぁ」
残念そうに言葉を漏らした瑠璃ちゃんの頭を撫でて、さっきの星の光をしっかり心と記憶に刻んだ。
「よっしゃ!そんじゃ次はこれ行こうぜ!」
花火が大量に入っている袋をあさって空雅が取り出したのは、打ち上げ花火。
「もちろん、火は空雅がつけるよね?危険だから、危険な目にあっても大丈夫な空雅がやれば安心だし」
「ちょ、ムウ!俺がどうなってもいいのかよ!?」
「もちろん。何があってもバカの力で何とかなるでしょ」
「さっすがムウ、容赦ないねぇ」
日向の顔が黒いよ、楽しんでるよ。
「空雅ー、火をつけたらすぐに逃げろよー」
「大丈夫だよ、空雅。火だるまになっても海に飛び込めばいいんだから」
「そう、そう」
棒読みの大和に、笑いを堪えている煌、何気におもしろそうな玲央。
「み、みんなしてぇ……」
「空雅お兄ちゃん、頑張って!!」
唯一、心優しい瑠璃ちゃんの言葉に単純な空雅はやる気を取り戻したらしい。
1人でバカみたいに叫びながら、花火に立ち向かっていった。
闇にほのかに光る水面を目の前に、最高の仲間と最高の笑顔。
春はいつの間にか過ぎ、夏の匂いが穏やかな風に運ばれて。
私たちを、包んでいた。
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