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早く帰ってご飯の準備をしないといけないっていうのは分かっているのに。
文化祭の存在をすでに知っている彼らに今回のことを話したら、どんな反応をするだろう。
私の気を重くさせているのは、これが原因。
コスプレとか劇とか男装とかは、別にやったところで私は何とも思わないんだけど。
それを私がやるってことに口を挟みそうな彼らに報告することが、今の私には難しい。
ようやく辿り着いた昇降口で靴を履き替え、ふっと頭を上げると。
「…っ……ビックリしたぁ…」
「あ、ごめんね?驚かせちゃった?」
満面の笑みで立っている陽斗が、いた。
「どうしたの、こんなところで」
「悠を待ってたんだよ」
「……私を?」
「うん。部活終わってから生徒会室覗いてみたらまだいたから。女の子1人をこんな遅くに歩かせるわけにはいかないでしょ」
「あははっ、私はいつものことだから全然大丈夫だよ。でもありがとう」
「確かに言われてみれば今日だけじゃないか!ごめんごめん、ちょっと疲れた顔してたから心配になっちゃって」
「あぁー……それは明日になれば分かるからお楽しみに」
「へぇー!それは楽しみだなぁ」
人柄の良さが出ている素直な顔で笑う陽斗の横に並んで、学校を出た。
「陽斗の家ってどこだっけ?」
「U駅の近くだよ」
「じゃぁ途中まで一緒だね」
「家まで送って行かなくて大丈夫?」
「全然!私も駅から近いしすぐだから本当に大丈夫だよ。ありがとね」
「そっか」
危ない危ない。
風舞先生のときのことがあるから、私の家には絶対に誰も近付かせたくない。
特に、陽斗には。
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