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陽斗と別れてやっとの思いで辿り着いた家の裏口を開けた、ら。
「おかえり、悠」
一体どこにそんな可愛いエプロンが潜んでいたのかと思うほどの姿をした柚夢が、珍しくキッチンに立っていた。
「あれ、どうしたの?」
「仕事が早く終わったから、たまには僕が悠にご飯を作ってあげようと思って」
「マジで!?うわぁ、ありがとうっ」
ちょっとした疲労感が残っていたせいで、ご飯を作ることにあまり気が乗っていなかったし。
柚夢の手料理を食べるのは初めてのような気がするから、嬉しい。
「もう少しで出来るから、着替えておいで」
「うん」
防音室になっていてピアノがある部屋でサックスを吹いていた大和と。
部屋で漫画を描いていた玲央に声をかけてから、自分の部屋に入った。
その日の夜は、柚夢が作ってくれた春巻きとポテトサラダ、ミネストローネを4人で囲んで。
日向までとはいかなくても、予想以上においしかった柚夢の料理に大和は悔しそうに睨んでいた。
それでも、黙々と箸を進めていたけど。
結局、柚夢の料理の凄さに気を取られていたおかげで文化祭の話題にならずにすんだ。
それでも、明日になれば放送で空雅が知ることになるから、みんなの耳にも入るのは時間の問題。
とりあえず、また明日から眠れない日々が続きそうだし今日は早めに寝ておこう。
とは言っても、あるバンドから依頼されている作詞を完成させないと。
「ふぁ~……あー、眠い」
最近の平均睡眠時間は5時間と、前よりも少し長くなったみたい。
きっとこれも、3人と暮らすようになってから。
誰かが同じ屋根の下で寝ているんだと思うだけで、安心感が全然違う。
ぱっぱと作詞を終えて、恒例の寝る前携帯チェックをすれば逢坂くんの憎ったらしいメールを発見。
極上のスマイル顔文字3つだけを張り付けて、送り返した。
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