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やっとの思いで携帯を耳から放して、小石を投げたら届きそうなくらい低い空を見上げる。
ずっと変わらないお気に入りの場所である、体育倉庫の屋根の上。
今頃、私の姿を探している人がごろっといるんだろうけど、今は1人で静かにいたい。
それに、電話の内容だって聞かれたらまずかったし逆に学校の声が彼らに聞こえるのも嫌だからね。
ようやく落ち着けたことにほっと胸を撫で下ろして、すぐに。
「まーた、ここにいるんだな」
上から、よく知っている声が降ってきた。
こんなことは初めてだったから、思わず勢いよく顔を声のほうに向けると。
体育館の2階ロビーの窓から、顔を覗かせて口角を上げている、風舞先生。
「先生!どうして!?」
「お前がよくここにいるのは知ってんだよ」
「何で!?私、誰にも教えたことないのに!」
「そりゃ、偶然に見つけたからな」
「うっそ。偶然に見つかるわけないじゃん」
「見つかったんだから見つけたんだよ。俺はよく、ここに来てお前を見てたけど」
……それは、別に変な意味が含まれているわけではないですよね?
私が急に黙り込んだのを不思議に思ったのか、風舞先生は眉間にシワを寄せた。
「あ……いや、別にそういう意味じゃないぞ?」
「大丈夫です、分かってます。風舞先生に限ってそんなことはあり得ないなーと思ったので」
「……まぁ、そうだな」
「でも何で先生はよくここに来るんですか?」
「そりゃ、男子バスケ部の顧問だからな。暇があれば体育館にくる」
え、なにそれ……めちゃくちゃ初耳なんですけど。
「おい何だその顔は。まさか知らなかったとか言うんじゃないよな?」
「全く知りませんでしたと言ったらどうなりますか?」
「なるほど。俺の話を全く聞いていなかったのか、それとも俺には全く興味がないのか。どちらにしろ、許せないことだな」
「え、へへー!新しいことを知れて、嬉しいです!」
「誤魔化しても無駄だ。はぁ……お前は本当に他の生徒とは違いすぎるんだな」
見下ろされているせいなのか、余計に風舞先生の目つきが怖いんですけど。
そんなことよりも、この場所を人に知られてしまったことがショック。
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