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何だよこの人、結局自分だって私のコスプレ姿が見たいだけなんじゃない?
「とにかく、6月25日は仕事も休みを取っておくから、絶対に全員で見に行くからね」
はぁ……やっぱり、そうなるんですか。
こうなったらもう覆せないことはよく分かっているけど、ため息を吐かずにはいられない。
重い重いため息を吐いた瞬間、バンッと裏口のドアが思いっきり開いて。
髪の毛を乱して汗だくの大和が、入ってきた。
「大和!?どうしたの!」
「悠!!お前、マジでやんのかよ!?」
苛立っているせいか、早口で捲し立てるように言った大和。
柚夢もソファから立ち上がり、落ち着かせるためにミネラルウォーターの入ったペットボトルを大和に渡した。
「…っはぁ……あー…マジで疲れた」
「お疲れ様。どうしてそんなに慌ててたの?」
「そんなのお前が原因に決まってるだろ!!空雅からあんなメールが来て今日は全然仕事が手につかなくなっちまったんだよ!」
「へ、へぇ……」
「おかげでいろいろやらかして仕事が長引いちまったし、バイクを降りてからドアまで全力疾走しただけでこんなに汗かくし」
「……誠にお疲れ様でした」
そんなに慌てるようなことでもないような気がするんだけど。
コスプレ姿ってそんなに人の心を乱すものなのかね?
「つーか!お前、何考えてんだよ!?まさかマジでやるつもりじゃねーだろうな?」
「いやいや、やらないとダメですから。生徒会長として決定事項ですから」
「ふざけんなよ!そんなこと、許してたまるもんか。コスプレって……マジで、ありえねーっつーの」
あぁ……やっと柚夢にはコスプレをすることは許可をもらえたと思ったのに。
ここでまた厄介者が登場してしまったか。
「大和、とりあえず文化祭の6月25日は絶対に休みをとってよ。行くに決まってるでしょ?」
「あったりめーだ!絶対に行くかんな」
うん、もう来ないと気がすまないならそれでいいとしよう。
ただね、まだ彼らにはとてつもなく重要なことを言えていないのです。
コスプレをするだけじゃなくて、その姿でちょっとした演技をしないといけないってこと。
来るってことは最終的にばれるんだけど、言ったら絶対に大変なことになりそうで。
それよりも、言わなかったときのことを考えるだけで鳥肌が治まらない。
究極の選択なんだけど……どうしたらよいものか、誰か正解を教えてください。
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