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が。
「逃げようとしても無駄ですよ、神崎先輩?」
あんなに可愛い顔のどこにこんな力があるんだと思わせるくらい、力強く手首を握られた。
「女教師と和服のコスプレが0名でしたよねぇ?」
「そ、それがどうしたの?」
「このコスプレを見たい人もいるんです。やらないのはその人の楽しみを奪うことと一緒ですよ?」
「そのー……一体それはどういうことでしょうか」
「分かってますよねぇ?神崎先輩、あなたがやるに決まってます」
……あぁ、これ以上私を苦しめないでおくれ。
「あははー逢坂くん。寝言は寝て言おうか」
「神崎先輩こそ寝てないでしっかり頭を回転させて下さいよ。生徒会長のあなたが生徒を喜ばせられなくてどうするんですか?」
「うっ……」
な、なんて卑怯な後輩野郎なんだ。
あんなに可愛くて優しくいい子な、私の知っている逢坂くんはどこにもいない。
「他の生徒会役員も首を縦に振ってますよ?」
そう言われて、後ろにいた他の生徒会役員たちに視線を送ると。
苦笑して頷いてる人、思いっきり頷いている人、笑っている人と様々だったけど共通しているのは。
私に拒否権はないと、目が言っていること。
「神崎、ドンマイ」
「……樫村、お前が生徒会長になればよかったのに」
「そんな恐ろしいこと俺にはできないな」
うちの生徒会役員は生徒会長様に厳しすぎやしないか?
私はいつから後輩の言いなりになってたんだろう。
「それでは決定ですね。神崎先輩は合計5つのコスプレをしてもらいます。大丈夫ですよ、きちんと着替えが回るように順番を決めればいいんですし」
「いやぁ~そういう問題じゃないような気が」
「さぁ、早く風舞先生に報告をしに行きましょう。明日から準備で忙しくなりますからね!」
言いたいことを言ってさっさと教室を出て行った逢坂くん。
私はまぁいっか、といつものようにすぐに気持ちを切り替えられずに。
慌てて職員室へと向かった。
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