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いよいよ文化祭が3日後に迫った6月中旬。
この日も帰りが遅くなり、連日の睡眠不足と疲れが爆発したのか。
家に帰るなり、ソファに思いっきり倒れた。
「悠!?こんなところで寝ちゃダメだよ!!」
「あー……疲れたぁ……」
「おいおい、お前大丈夫かよ?」
「……悠、大丈夫じゃ、なさそう」
ここで寝たら私を運ぶために3人の誰かが私の部屋に入らないといけなくなる。
何より、ここで寝たら3人がどんな想いをするのかも理解しているつもりなんだけど。
やっぱり人っていうものは、睡魔には勝てない。
「悠!本当にここで寝たらダメだから」
「いやー……もう、寝てるなこれは。無理に起こすのも可哀想だろ。ここで寝かせようぜ」
「ちょっと、大和は我慢できるわけ?」
「こんなに疲れている悠を襲うほどバカじゃねぇ。玲央、俺たちの寝室から薄い掛布団、持ってきてくれ」
「ん」
瞼は閉じているけれど、まだぼんやりとしている頭のおかげで3人の会話がしっかり耳に刻まれる。
「悠……本当に大丈夫かな?ご飯も最近、しっかり食べていないし。生徒会って本当に大変なんだね」
「こいつは生徒会だけじゃないからな。常に周りのことばかり気にして、自分のことは気にしない。本当、頭いいけどバカだよな」
あぁ、思いっきり言われまくっているから言い返してやりたいのに。
瞼が重すぎて開かないし、声を出す気力すらないみたい。
「……大和はさ、思わない?学校での悠はどんな顔で笑っているんだろうって」
「何が?」
「だって家にいるよりも学校にいる時間のほうが長い。僕たちといる時間よりも学校で友達といる時間のほうが悠は好きなのかなって」
「それは…まぁ、分からなくはねぇけど」
「友達って思っているのは悠だけで、男たちは悠を女として見ているのがほとんどだと思うし」
そんなわけ……ない、じゃん。
「それがすっごくムカつく。もっと悠と一緒にいたい。僕が一番悠のそばにいたい。出来ることなら、この世に男は僕だけになればいいって思うこともある」
「お前、それはすげぇな……ふっ、でも俺もそうだ。どうしようもなく、悠をめちゃくちゃにしたくなる」
私が生まれたての赤ん坊のように、優しく頭を撫でる手。
この温もりと手の感触は、見えなくても柚夢のものだって分かる。
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