第6恋

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会場に人が集まっているおかげで、舞台袖に到着するまでに誰にも会わずに来れた。 「……ん?」 舞台袖にいた生徒会役員や他の出場者の視線とざわめきに顔を上げると。 天然記念物でも発見したかのような、目に穴が空きそうな視線を受けた。 「か、神崎…先輩……?」 「え、そうだけど。変…かな?」 「……っ…」 恐る恐る声をかけてきた逢坂くんに首を傾げると、顔を真っ赤にして思いっきり顔を横に振った。 ちょ、そんなに勢いよく振ったら首、もげるよ!? 「今どこら辺かな?」 「ああああ、あと1人が終わればふ、婦警ですっ!」 「ちょっと逢坂くん?めっちゃ噛んでるけど大丈夫?」 「……大丈夫じゃ、ないです…」 「えっ!?具合でも悪いの!?」 「神崎、そういうことじゃないから。今は放っておけ」 苦笑いで逢坂くんの肩を掴んだ樫村の言う通り、熱はなさそうだ。 カシャカシャ、と嫌な音が聞こえてきたなぁと思えば、他の生徒から勝手に写メを撮られているし。 ま、もう男装の時に写メを撮られることは慣れたからいいけど。 悪用されなければ、の話だけどね。 婦警は私を含めて合計4人なんだけど、他の3人は全員男子で、私が一番最後。 きっと、爆笑の後に出るからたぶん……大丈夫。 「いやぁ~可愛いチアガールでしたねぇ!若干1名、大きいチアガールがいましたがっ」 司会者の言葉に会場は笑いの音で包まれている。 こういう音を聞いていると、恥ずかしさとか憂鬱さとかはどうでもよくって。 生徒みんなが、学校全体が、観てくれる人みんなが、楽しんでくれていることがすごく嬉しい。 「さて続いてのコスプレは……婦警です!女警察官、これもコスプレの定番ですね~。誰が登場するのでしょうか!?」 その言葉と同時に、最初の男子がステージへと飛び立って行った。 .
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