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……今時の和服コスプレって、どうしてこんなにセクシーに作られているんだろう。
思いっきり胸が開いていて、和服だというのに膝丈ギリギリのミニスカート。
黒の生地に花柄サテンの模様、襟と帯は空色でこれが少しセクシーさを爽やかにしてくれている。
もし帯の色が赤とかピンクだったら、かなり攻めているコスプレだよな。
何とか帯もしっかり結べて、靴は和服だっていうのに、黒いピンヒール。
髪は無造作におろしたまま、花飾りをつけるだけ。
どうやら、今時の和服っていうのはこういうのが流行っているらしい。
シナリオを何度も頭の中で確認して、舞台袖へと戻った。
「続いてのコスプレは………しっとり和風美女を演出!誰をも魅了する癒し系サテンナイティ!そして美女と言えば、この人以外にいなぁぁい!!」
相変わらず活気に満ち溢れている司会者の声と共に再びステージへと立った。
あちこちから驚きとざわめき、悲鳴が混ざり合った音が私の鼓膜を揺らす。
小物のセンスをパッと出して、口元に持っていき、そのままポーズをとる。
カメラのフラッシュが、いきなり目の前で白い爆発を起こしたみたいに明るかった。
「あらあら……今日もとっても暑いのねぇ。もっと露出しても大丈夫かしら?」
センスを扇いで襟を少し下にずらす。
本当に数ミリだけ、胸元がさらに開いただけで会場の興奮は急激に加速していく。
めちゃめちゃ恥ずかしいし、自分は何をやっているんだと呆れるけれど。
もうここまで来たら、やるしかない。
「着物って、ペロンと脱げるから便利よねぇ?え?なぁに?もしかして……この下が、気になるのぉ?」
おえぇぇ……自分で自分が気持ち悪すぎて今にもトイレに直行したい気分。
それなのに、観客たちは誰一人引いている表情がないってどういうことだ。
お年寄りや大人だって結構いるのに、若いっていいわねぇみたいな目で見てくるし。
あ、あそのこの禿たバーコードおっさんなんて鼻の下伸びすぎでしょ。
こんな時でも自分の思考はしっかり人間観察に向けられていることに、内心ため息を吐いた。
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