第6恋

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そしていよいよ、最後のコスプレ。 あぁ……ここまで来るのに本当に長かったし、体力の消耗が半端ない。 でもこれでこの1か月間、死ぬ気で準備してきた文化祭も無事に終わる。 今のところ、生徒も一般客も楽しんでいるみたいだから本当によかった。 最後の最後もやっぱり私っていうのが疑問だけど、気を抜かないでしっかりやろう。 と、いうわけで最後のコスプレはナース。  光沢サテン生地を使用した、薄いピンク色の清楚な雰囲気のナース服。 胸元は開いていないけど、スカートはやっぱり短くて男ウケしそう。 髪の毛は後ろで1つに縛って、ナース帽もしっかり被る。 カルテと玩具の注射器も忘れずに、最後の深呼吸を1つ、静かにした。 「さぁぁぁぁ!ついに……ついに、ついに!!!コスプレファッションショー、最後のステージとなってしまいましたっ!最後に素敵なステージを飾ってくれるのは………この人しかいませんっっ」 バッと体育館全体は暗くなり、ステージに立った私だけにスポットライトが当てられた瞬間。 『キャァァァァァァァァ!!!!』 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』 今日、最高潮の歓声と悲鳴が体育館中に響いた。 「検診のお時間です。心臓の音を聞くので服を脱いでください。そう、いい子ですね」 ニコッと微笑めば、あちらこちらからピンク色のため息が零れた。 「次は注射です。ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね。それに……私がやれば、大丈夫でしょ?」 斜め45度に首を傾げて、注射器を耳の横に持ち、上目使いで見るような眼差し。 ポイントは満面の笑みじゃなくて、小さく微笑むところって台本に書いてありました。 「……よしっ!できたぁ。よく頑張ったね。え?頑張ったからご褒美かぁ……うん、分かりました。ご褒美、あげます」 『ご褒美』という単語はかなり萌えるとコスプレマニア少女が熱く語っていたけど、本当にそうらしい。 期待に満ちた悲鳴と雰囲気が、真っ暗の会場からでも伝わってきた。 .
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