第6恋

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これで、本当に最後のパフォーマンス。 これまでセクシーだったり、ちょっとドキドキさせたりしてきたけれど。 一番最後はありったけの愛を込めて、可愛く終わりにしよう、と私の独断で決めたこと。 ステージギリギリのところで立ち、それを合図に体育館全体に灯りが広がっていく。 私はぐるっと会場を見回してから、大きく深呼吸をして。 「今日は本当にありがとうございました!!!みんな、愛してるよー!!!」 最後に大きく投げキッスをして、満面の笑みを浮かべながら興奮している生徒たちに手を振った。 高く空の上へ引き上げられたような興奮で満ちた表情をしている生徒。 尻尾に火のついた犬みたいに手を振り回す生徒。 顔を真っ赤にして目をキラキラと輝かせながら、満面の笑顔の生徒。 こうしてみると、人生で1度しかない高校時代の青春を1人1人が心から楽しめたことが伝わってきて。 生徒会長として、この笑顔を見るために頑張ってきたことが報われたような気がした。 それと同時に、いろいろ恥ずかしい思いはしたけどこの笑顔を見れたならどうってことなかったな、と。 すごく嬉しくなって、心からの笑顔で何度も何度も「ありがとう」を口ずさんでいた。 こうして、M高校文化祭は無事に終えた。 一番最後にあった男装女装コンテストの結果は、もちろん男装は私、女装は逢坂くんが優勝。 賞品はノート5冊とシャーペンという最初から分かっていたやつ。 でも賞品なんかはどうでもよくて、みんなが楽しめたことが大切なんだ。 「神崎先輩!僕、優勝しましたよ!」 「そんなの分かっていたことでしょ~」 「それじゃ……約束、守ってくれますよね?」 「あぁ!もちろん!」 一般客が体育館を出て行ったあとは、生徒たちで体育館の掃除をする。 ステージ上に掲げてあった、文化祭の看板を片付けているとき、逢坂くんはご機嫌顔で話を持ち出してきた。 逢坂くんが優勝したらお願いを聞くっていう約束を、果たさなければ。 .
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