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憂鬱な気分の中に閉ざされながらも、私が最後であろう昇降口を出た。
たちまち暗い夜が重い幕のように落ちて来て、数本の街灯だけが足元を照らす道を歩く。
最寄駅までは徒歩で約10分。
普通に車も通っている道だし、確かに暗いけど危なくはないと思う。
頭の中は、耳にしているイヤホンのおかげで音楽のことばかりだし。
外の音はすべてシャットアウト、私だけの世界を楽しむだけ。
だから。
ぐ、と。
思いっきり腕を掴まれて、身体が斜めに傾いた時は、こんな私でも一瞬焦った。
「こんの……バカ女!!!」
メガホンを口にあてがって、太いバスで怒ったように叫んだのは。
「…大、和……?」
表情に獣のような怒りがギラギラと光っている大和が、目の前にいた。
いつの間にかイヤホンは耳から抜き取られていて、両腕を力強く握られている。
今にも噛みつきそうな大和と、突然のことに私の心臓は珍しく、激しく動いていた。
「大和!」
後ろから聞こえてきたのは煌の声と、いくつかの走り寄る足音。
恐る恐る大和の後ろを見てみると、予想通りのメンバーが集合していた。
「えーと……なぜ、みんなしてここに?」
「お前をずっと待っていたに決まってんだろ!」
「は?待ってたって……いつから?」
「文化祭からずっとだっつーの。携帯にいくらかけても繋がらないし、帰りがいつになるかも分かんねーし」
私、一気に疲れが押し寄せてきて頭がおかしくなったのかな。
リアルすぎる夢をみているんだけど。
「悠!!あぁー……もう、よかったぁ」
ぐら、と大和の腕から私を無理やり引っ張り出して抱きしめたのは、柚夢。
この腕の感触……あはは、夢じゃないみたいです。
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