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6月25日、土曜日。
今日は悠の高校の文化祭だ。
生徒会長なんてやっているせいで、俺がリビングに入ったときにはすでに悠の姿はなかった。
「悠はもう行ったのかよ?」
「そうみたい。俺が起きたときにはもうテーブルに置手紙があったから。随分早く出たんだよ」
キッチンで朝食の準備をしていた日向も悠と会っていないほど、あいつは早く家を出たのか。
………逃げた、としか思えないな。
「午前中は大して悠は何もしないみたいだから、午後になったら行くよ」
ソファでコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた煌の言葉に、頷いた。
昨日の夜から全員この家に泊まっていて、いつものように煌の車、俺と玲央はバイクで行く。
「築茂、カメラの準備はばっちり?」
「当たり前だ。充電の心配もない。SDカードの予備も用意してある」
ムウと築茂は、子供の運動会へ行く親のように準備万端だし。
悠がコスプレをするってことに一番反対していたムウが楽しそうってどういうことだよ。
俺は今から気が気じゃねーし、何だか知らねーけど心臓の動きが早い。
「悠に言われている通り、目立たないように注意しないと。6人行動は絶対目立つから、2手に分かれる……って、言わなくても分かってるよな」
煌の言う通り、これは悠が言っていたことだ。
どうやら、悠は俺たち全員が文化祭に来ることが嫌らしい。
『みんなが来たら、めっちゃ目立つんだもん!それに、もし同棲していることがバレたらヤバイんだから。私の知り合いだって勘付かれないようにすること!分かった!?』
“同棲”なんて、悠は簡単に口にしているけど、その言葉を悠の声で聞くたびに俺の心臓は高鳴る。
だからこそ、この生活を壊さないために悠の言うことは守らなければいけない。
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