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何度も何度も電話やメールをしているのに、悠の携帯に繋がらない。
文化祭が終わってかれこれ2時間は経った。
いつ終わるのか、何時ごろ帰れるのか、誰も知らなかったから唯一の連絡手段である携帯に何度もかけている。
なのにあいつは、一向に出る気配もないし、何のための携帯なのか、絶対に分かっていないな。
「おい空雅!本当にもう少しなのかよ?」
「んー……たぶん?」
「たぶんって何だよ!っつーか、お前がもう一回、学校の中入って、悠を呼んでこいよ」
「そ、それは無理無理!たぶんもう、悠と先生しか残っていないし!廊下とか真っ暗だかんな!」
こんの、ビビり野郎が。
「それにしても遅いねぇ。こんなに生徒会長って大変なの?俺、吹奏楽部の部長も大変だけど、悠とは比べものにならないな」
「俺の同級生の生徒会長はここまでしていなかったよ。何でもできる悠だから、先生たちもここまで頼ってるんだと思う」
「本当にすげーよな。試験もほぼ満点でいっつもトップだし、運動神経もずば抜けてるし。俺、意外と学校では悠と話せないんだぜ?いろんな奴に囲まれてて入れねーの」
「ちょっと空雅。学校での悠を見れるのはお前だけなんだから、ちゃんと見ていてくれないと」
青田っていう、すでに特定の人間がいる空雅ならまだ安心はできるしな。
ムウの言う通り、空雅しか学校での悠を知らないっていうのはちょっとムカつくけど。
俺は最近、よく思うことがある。
「あー……俺も、悠と同じ学校行きたかったわ」
ぼそっと蚊が鳴くくらいの声で呟いたつもりだったが、は?と顔全体でドン引きした日向。
「な、なんだよ……」
「大和さ、その頭で俺と同じ高校に入れたとでも本気で思ってるの?」
「思ってねーよ!だけど、空雅も行っている高校だと思ったら行けたかもしんねーな、って思うだろ?」
「あぁー、それは分かるかも」
「えっ、なにそれひどくね!?」
悠と出逢うって、分かってたらよかったのにな。
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