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そして、現在に至る。
真っ直ぐ家に戻ってきた俺たちは、すぐに悠をソファに座らせて全員で逃がさないと言わんばかりに囲んで座った。
俺は睨み付けるようにして悠にすべての苛立ちを向けているけど、当の本人は何を考えているのか全く分からない。
でもこいつのことだから、反省なんかはしていないだろうし、そもそも何が悪いのか分かっていないだろう。
「悠、とりあえず携帯に全く連絡が繋がらなかったところから説明してくれないかな」
こんな時でも一番大人な対応をする煌が恨めしいというか、憎たらしいというか。
でも無表情だった悠の表情が、微かに眉を動かしたのを見ると、やっぱりこれが一番いいんだろう。
「……実は朝から終わって学校を出るまで一度も携帯に触れなかったの。携帯を出して電源を入れても、すでに充電がなかったんです」
「そんなに充電が少なかったの?」
「なわけないでしょー。朝出るときは常に満タンだもん。メールや電話の数が多くて、勝手に充電が減って行ったと考えるのが妥当なんじゃない?」
「………」
それはつまり、俺たちのせいで連絡が出来なくなったということ……だよな?
「おいおい、嘘だろ~!どんだけ電話してたんだよ!」
「空雅、お前はちょっと黙ってて。悠の言い分は確かにあるかもね。だけど、いくらなんでも1日ずっと携帯に触れないなんてありえない」
ムウの表情はにこやかだけど、目は死神でも呼びそうな色をしている。
まぁ、今考えてみるとかなりの電話をしていたかもしれなくもない。
確かにスマホは充電の無くなりが早いし、途中で電源が切れていることには気付いていたけど。
悠自身が電源を意図的に切って、勝手に切れていたとは思ってもみなかった。
「携帯に触れなかったことは謝るよ。でも忙しくて携帯なんて構っていられなかったのも事実だからさ」
「それもそうだな。携帯のことは分かった。でも悠、俺たちが怒っている本当の原因、もちろん分かっているよな?」
「………うふふ」
この期に及んで、笑いで逃げる気かよこいつ。
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