第7恋

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実際、あんな悠の姿はもう二度と見れないと思うと、悠のコスプレ姿を見れたことに関しては後悔はさらっさらしていない。 だけど、その姿をあんな大勢の人前で惜しみなく曝け出した悠の頭はおかしいだろ。 いや、コスプレだけならまだよかったかもしれない。 問題はコスプレをしながらやった、あの演技と言った言葉だ。 「悠、僕は言ったはずだよね?途中結果も報告してって。聞いても何もないって言っていたってことは、僕に嘘を吐いたってこと……だよね?」 口角を歪めて奇妙な笑いを浮かべるムウに、悠の顔からさっと血の気が引いて行くのが見てすぐに分かる。 それほどまでに、ムウの冷めた笑いは見たものすべてを凍らしてしまいそうだ。 「大変、申し訳ありませんでした!」 「謝ってすむとでも思っているの?最初から謝ればどうにかなるとでも思っていたの?僕の怒りがそんなに簡単に静まるとでも本気で思ってるの?」 「……思ってませんすいませんごめんなさい」 ムウの怒りは俺の怒りとは正反対。 俺は言葉と表情と態度、すべてで怒りを大きく表現するけど。 こいつは、静かにオーラと視線でじわじわと相手を攻めていく。 こいつが怒ると、日向の次に怖いんじゃないかと俺は勝手に思っているくらいだ。 「ムウ、そこまで。悠、生徒会長としてやらなければいけなかったことは分かってる。だけど、やるなら隠さずに最初から言ってほしかったよ」 誰も踏み込めないムウの雰囲気を破れたのは、やっぱり日向だった。 「だって、先に言ったら学校に抗議されるくらい反対されると思ったんだもん」 「………」 誰も何も言えないこの状況が、悠の言っていることを否定できないという証。 最初からこうなることが分かっていたら、俺たちは全力で阻止していただろうな。 悠はそれを分かっていたからこそ、終わってから何とかしようと考えたってわけか。 .
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