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相変わらず、バカなくせに頭がいい厄介な奴だ。
「ほらね?やっぱりみんな黙るでしょ?何かみんなさ、バカみたいに過保護っていうか、親ばかみたいな感じだと自分たちで思わない?」
………過保護?親ばか?
「私は生徒会長として生徒のみんなの心に残るモノをやりたかった。だから、生徒たちのアンケートで一番望まれていたことをしたの。……まぁ、その結果も私には理解しずらかったけど」
こいつは、何にも分かっていない。
俺たちがどうしてここまで悠に執着してしまうのか、どうしてこんなに苛立っているのか。
「あんなコスプレでちょっとした演技くらいで、ここまで怒るなんておかしいと思うっていうか、私にはさっぱり理解できな……」
ドンッッッ、と。
硝子テーブルを、音だけ聞くとヒビが入っていてもおかしくないくらい強く叩いて、悠の言葉を遮ったのは。
「………黙れ」
それまで恐ろしいほど何も言わなかった、築茂。
「え、築茂?どうし……」
「黙れって言ってんだよ!!!」
全身怒りの塊で、耐えきれず爆発したように叫んだ築茂を前に悠も口を閉ざした。
「お前はいっつもそうだ。お前の中では理解できない、どうでもいいことだろうな。だけど俺たちの中では、感情の処理ができないほど、突き動かすものだということを……少しは、理解してくれ」
掠れた声で、息を吐き出すように言った築茂の言葉は俺も言いたかったこと。
俺と違うのは、最後まで怒りだけで言葉を発することはしないで、何とか怒りを鎮めようとしているところだ。
そのまま、頭冷やしてくる、とリビングを出て行った築茂の後ろ姿を。
悠は、目で追うことはしなかった。
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