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凍りつくような沈黙、この場にいる全員の唇は微動だにしない。
悠の表情からも、何も感じ取れなかった。
「……な、何か飲もうぜ!あー、俺、喉乾いちったなぁ」
沈黙が大の苦手である空雅は、わざとらしく目を泳がせながらキッチンへと立ち上がった。
ガチャガチャ、と慣れないキッチンでわざとらしく大きな音が鳴り響くリビング。
悠はただ、ぼーっとどこを見つめているのか曖昧な瞳をしていた。
「ひゅ、日向!ストローとかねぇのか!?」
どうやら俺は、空雅のバカ加減を甘く見ていたらしい。
ドン引きする言葉が投げ込まれてきて、それをキャッチ出来たのはやっぱり。
「空雅、あまり荒らさないでね。ストローもあるから」
苦笑しながらソファを立った、日向だけだ。
そのまま沈黙は続き、しばらくすると人数分のコップと飲み物が運ばれてきた。
もちろん、ストロー付きで。
「……おい、何で全部にストローがあんだよ。空雅だけのでいいだろうが」
「はっ!?みんなで仲良く飲むんだから当たり前だろ!」
「はぁ?お前は本当にバカの塊だな。みんなで仲良く、ってガキじゃねーんだから」
「そういうワガママを言う奴にはあげねーぞ?」
「自分でやるわボケ。てめーは黙って座ってろ」
「はいはい、大和も空雅もそこまで!飲むなら適当に好きなの入れて、勝手に飲んで」
日向が俺と空雅の間に入り、にこやかにほほ笑んだ。
やっぱり、こいつのこの笑顔が一番冷や汗出るよな。
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