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そんな日向は、悠のコップに水を注ぐ。
他にもジュースはあるけど悠に聞いて返ってくる答えが分かっているからだ。
「はい、悠。気分転換に飲んだほうがいいよ」
「……うん、ありがとう」
小さく微笑みながら、悠の綺麗な腕が日向へと伸ばされた。
いつもならこんな些細なことでは何とも思わない俺なのに、今日の俺の沸点は低いらしい。
その綺麗な腕を、俺の腕だけに縛り付けてしまいたいと、強く思ってしまう。
「俺、築茂が心配だからちょっと様子見てくるわ」
そう言って立ち上がった煌を、悠は僅かに不安気な色を瞳に映した。
すぐに気付いた煌は、そのまま悠の頭を撫でて短く息を吐く。
「大丈夫、そんな顔をするな。築茂の言っていることも確かに一理あるけど、あれだけが築茂の本心じゃないことも悠なら分かってるだろ?」
悠が、煌に頭を撫でられることなんて日常茶飯事だ。
「すぐに戻ってくる。少し、この件について俺たちも一度頭を冷やして考えるべきだな」
煌の手が悠から離れたのに、悠の視線がリビングを出ていく煌の背中を追っていく。
こんなこといつものことで、もうだいぶ前に慣れたはずじゃないのか?
俺が勝手に悠を独占したくて堪らないってだけで、悠は誰も選んでいないし誰のものでもない。
だから悠の放つ言葉も行動も、悠自身の意思で決めることが普通だ……ってことは、よく分かっている。
どうしてだ?
どうしてこんなに、イラつく?
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