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今まで、心臓を握りつぶす思いでここまでいろんなことを我慢してきたはずだ。
我慢できていた、はずだ。
確かに今日は悠のあんな姿を見ていつもより苛立っているけど、今は普段と何ら変わらない。
「……悠」
それまで大人しく座っていた玲央は、のそりと悠の隣に座りなおしてそのまま。
悠の膝に、頭を乗せた。
「っ……」
玲央が悠に膝枕を強要することも、それを拒否しない悠の姿も毎日のように見ている。
これはただの生活リズムで、悠と玲央の間に特別な関係があるわけでもない。
確かに見るたびに胸が軋む音を聞いても聞かぬフリをしているけど、今日だってそれと同じはずだ。
それなのに………。
「玲央!!!」
悠に誰かが少しでも触れている姿を見ると、強引にでも引き剥がしたくなる。
「今はそれ、やめろ。じゃねーと殴りかかりそうだから」
玲央の肩をぐ、と引いて悠から離した。
玲央は驚きで目を見開いたけどそれも一瞬で、すぐに俺と同じように目を鋭く光らせた。
無言で睨みあうまま数秒、先に目を逸らしたのは玲央のほうだった。
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