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音楽に集中している私は周りのことが一切見えなくなる。
だから、彼らがそんな私の姿を愛おしそうに見つめていたことなど、知りもしない。
「ふぅー……あとはここに柚夢のギターを入れてっと。煌と築茂なら綺麗な倍音が出来るから……うん、イメージピッタリ!」
すらすらと紙に記しては一度ピアノで弾いて、そこに彼らの楽器が入ることを想像する。
1つの音楽を作っているとき、新しい世界が広がっていくようですっごく楽しい。
うふふ、今回のはすごくお気に入りかも!
「悠…?まだ、やってるの?」
苦笑しながら部屋に入ってきた玲央と、玲央の腕の中にいるレイ。
相変わらずこの2匹のツーショットは癒されますねぇ。
「あれ、もうこんな時間!みんなは?」
「リビングで、遊んでる」
「そっか。もう終わるから今行くね」
「ん」
最後の小節を終わらせるために、また私はペンを握る。
玲央は私が座っているイスの横の床に、ちょこんと座った。
レイとじゃれ合っている姿が、本当に可愛くてもう少し見ていたいな、なんて思う。
「どう、したの?」
「うーん?本当に玲央とレイは可愛いなって」
「………」
小さく笑えば、玲央もふっと視線を落としてまたレイと遊び始めた。
照れ隠しをするところも可愛すぎる。
「よし!終わった。行こっか」
「……ん」
達成感に満ち溢れたまま、防音室を後にしてリビングへと入れば。
「よっしゃぁー!!!大和に勝ったぁぁ!」
空雅の雄叫びが耳に刺さりましたとさ。
「あ、悠!お帰り」
「ただいま~。何やってんの?」
「麻雀。空雅が初めてビリじゃなくなった瞬間だよ、今」
「ぶはっ!大和、空雅に負けたんだ!」
「うっせ」
私を見つければ嬉しそうに笑う柚夢。
大和を見て茶化す日向に私も笑い飛ばせば、拗ねた顔で唇を尖らせた。
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