第7恋

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結局、一番シンプルで女らしさがある玲央の選んだ財布に決まった。 未だにぶつぶつと文句を言っているムウを無視して、出口へと向かう。 日曜日ということもあって、やっぱり人は多かった。 すれ違う女の匂いが香水臭くて、鼻をつまみたい衝動を必死に抑えながら頭の中で悠の匂いを思い出す。 甘くて、自然で、悠そのままの匂い。 そんな、悠の匂いを思い出していたせいだろうか。 「え………?」 毎日、何度も、手を伸ばせば触れられる距離で感じている、悠の匂いが。 僅かに、微かに、感じた。 咄嗟に振り返って、流れていく人のゴミの先を真っ直ぐに見据えると。 知らない男と並んで歩きながら、笑っている悠が、いた。 見間違えるはずもない悠の姿に、俺の足はその場で止まった。 「大和……?どうしたんだ?」 俺の様子をおかしく思った煌の声と一緒に、後ろの奴らも全員が立ち止まる。 今日、悠は生徒会のメンバーで文化祭の打ち上げだと言っていた。 生徒会は合計7人いるはずで、しかも打ち上げなんだからこんなところにいるはずがない。 「なぁ………悠は、打ち上げに行っているはずだよな?」 「え、そうだって言ってたじゃん。それがどうしたの?」 何も疑っていない様子でムウの答えが返って来た。 「じゃぁさ、見ろよ……あれ」 そう言って、俺は真っ直ぐに悠のいる方へと指を向けた。 .
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