343人が本棚に入れています
本棚に追加
出口を出て駅のほうへと歩き始めた2人。
周りには知り合いらしき人物もいないし、相変わらず2人だけで肩を並べている。
「これはやっぱりデート、かも」
出口を出るときに合流した煌がぼそっと呟いた言葉に、俺たちの間で不穏な空気が流れ始めた。
「これではっきりしたよね。悠はまた僕たちに嘘をついたんだ。早く取り返して事情聴取させないと」
「今回ばかりは、俺もムウと全くの同意見だな。悠を庇うことはできない」
いつもどんな状況でも一番大人で変わらない煌ですらお手上げ。
あいつは本当に何も分かっちゃいない。
「どうやって取り返すんだ?普通に声かえるだけじゃつまらなくね!?」
「確かにそうだな。ちょっとこらしめてやらねーと」
悠には少し思い知らせないといけねーからな。
「こらしめるって言ったってどうするの?俺は乱暴なことだけは反対だよ」
「空雅、あの男の名前は?」
「えーっと、確か逢坂稔ってやつだったと思う!……ほら!文化祭の時に女装で優勝したやつだよ!」
日向の意見は完全スルーしたムウが聞くと、空雅が思い出したように言った。
そう言われてみればそんな感じだけと、その時は悠のことで頭がいっぱいだったから全然覚えてない。
「あぁ……逢坂くんか。身長伸びたから気づかなかった」
「日向も知ってるの?」
「ちょっとね。一応高校の後輩だし」
「ってことは空雅と日向はあいつに顔を知られてるってことだね」
ムウの言葉に2人は頷いた。
.
最初のコメントを投稿しよう!