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俺たちがそんな話をしているうちにも、悠と逢坂っていう奴の間から笑い声は絶えない。
あんなに楽しそうに笑う悠は、俺たちの前だけだと思っていたけどそうじゃなかった。
そう思っていたのは、俺の勝手な妄想だったんだ。
「もしかしたら俺も顔は知られてるかもしれない。去年、悠の高校に出入りしていたし」
「そうだね。それじゃ、僕の作戦を実行する人間は絞られたってわけだ」
「作戦?作戦って何だよ?」
ムウのニヤリ、とした顔が俺を使って何かしようとしているのが直感で分かった。
「な、なんだよ……」
「大和~、お前はこの中で一番ガラが悪いよねぇ?」
「は、はぁ?」
「僕の作戦はこうだよ。名付けて『お前は悠をどこまで本気で好きなんだ!?』作戦」
いや、あの、そんなカッコつけて言うことじゃないっていうかむしろカッコ悪いんだけどお前。
「この作戦を成功させるには大和にかかっている!大和はどっからどう見ても不良、チャラ男に見える」
「おい、どういうことだよてめぇ」
「だから、その見た目を利用して大和が2人に近付いてナンパ男を演じるんだ。で、悠を無理やり引っ張って連れ去ろうとしたとき、あいつがどんな行動をするかによってあいつの運命は決まる」
「ムウ……それ本気で言ってんの?」
「もちろん。ってことで大和、頑張ってよ」
日向が思いっきり引きつった表情をしているのに、ムウはしれっと肯定しやがった。
ちょ、それって俺が悪者になるってことだよな?
「い、いやいやいや!!無理だから!っていうか、絶対悠にドン引きされるじゃねぇか!」
「うん。だから大和なんだよ。きっと悠は、こんな奴と知り合いだってことを知られたくないだろうから黙って見ていると思うし?」
「お前……相当な悪だな」
「はははっ!すべては結果がよければいいんだよ。悠をこれ以上あいつの隣に置いておくのもそろそろ限界だからね」
何でだ、何でだよおい。
何で誰も助けてくれねぇんだよ。
何だよその、頑張れ大和ご愁傷様っていう目は!!!
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