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走って先回りをし、さも今そこから出て来たかのように曲がり角を曲がった。
「おい、お前ら」
ポケットに手を突っ込んで、眉間にシワを寄せて悠と逢坂を睨む。
悠は一瞬、きょとんとした目で俺の顔を見つめた。
「な、なんですか…」
「お前、いい女連れてんじゃねぇか。つーか、全然釣り合ってねぇんだけど?俺と歩いたほうが絶対にいいぜ?なぁ?」
日向の言う通り、見た目は弱そうだけどすぐに悠を背中に庇った逢坂。
でも俺の目力は人から良くも悪くもいろいろ言われてきたものだから、逢坂の表情も強張っている。
……っていうか、悠の顔が思いっきり引いてるんですけど。
「やめてください。彼女は僕と……」
「あぁ?お前、こいつの何なんだよ。まさか……彼氏、なんて言わねーよな?」
「ち、がいますけど…」
「ならいいじゃねぇか。そこの女、俺に寄こせ」
悠たちの後ろで思いっきり声を出さずに笑ってる奴らの存在がちょーうざい。
「僕たち、急いでいるんで」
「おっと、逃がさねぇぜ?傷つけられたくなかったら、抵抗せずに女を置いてお前はとっとと消えろ」
「…っ……」
こんなこと、嘘でも悠の前で言いたくなかったと言ってから軽い後悔を覚えた。
悠は俺たちに嘘を吐いていたことがバレたんだし、しばらくは大人しくしているつもりだ。
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