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第一、俺がこんなことをする羽目になったのも全部悠の嘘が原因だ。
この俺をここまで動かせるのも悠だけなのが悔しいけど、帰ったら覚えてろよ。
「別に悪いようにはしねーよ。こんないい女を手荒に扱うなんて、そんなバカなマネもしねー」
「……信じられません」
「あっそ。お前なんかはどうだっていいんだよ。こいつを俺に寄こせばそれで終わりだ」
あー……だんだんイライラしてきた。
彼氏でもないくせに意地張っちゃってさ、一生懸命悠を守ろうとしてやんの。
ムカつく。
悠の隣に立つのは俺だし、悠を一番守れるのも絶対にこの俺だ。
こんな、悠の外側しか見てない奴に悠の何が分かるって言うんだよ。
「つーかお前さ、彼氏でもねーんだったらこいつの何なの?」
「そ、れは……学校の先輩で、僕にとってはとても……とても、大切な人です!」
「大切な人、ねぇ?じゃあ、お前はこいつの何を知ってんだよ?こいつの何が大切なんだよ?」
「え、っと……全部です!!」
「全部?そんなの誰でも言えんだよ。こいつの外側だけで、中身なんて何も知んねーんじゃねぇの?」
「そんなことっ…!」
「ない、って言うなら具体的に言ってみろよ?誕生日、血液型、好きな食べ物、好きな色、そのくらい知ってるんだろ?」
「……っ」
知らないはずだ。
悠の誕生日も血液型も、俺だってあいつらだって誰も知らないんだから。
悠でさえ、知らないんだから。
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