第7恋

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「ピアノを始めたのは小学1年生。その頃から絶対音感は持ち合わせていて、あっという間に音楽の才能が開いた。最近のマイブームは動画を撮る用の変な仮面を集めること」 集めすぎていて、今では結構な量なんだけどな。 「家にあるCDはざっと1000枚以上、テレビはほとんど見ない。見ている時間があるなら音楽に使いたい。音楽が恋人のようなもの。音楽と海と青い空があれば、最高に幸せ」 「……大和」 「なんだよ?何か間違ってたか?」 「まぁ1つだけ訂正するなら、音楽と海と青い空と……8人で奏でる音があれば、最高に幸せ」 「ふっ……はは、本当にお前には敵わねぇな」 「ところで大和さん、ご自分の立場をお忘れで?」 「は?」 「あなた、どうして今ここにいるか分かってる?」 「…………あ」 やっべぇ……やっちまった。 ちらっと悠の隣に立ち尽くす逢坂を見ると、空気銃で撃たれた小鳥のように眼を丸くしていた。 「えっと……お2人は……?」 「逢坂くん、ごめんね。この人は私の知り合い。不良でもナンパでもないから安心して。本当はめちゃくちゃいいやつだから」 「うわぁー……俺、カッコ悪………」 「面白いから黙って見てたけど、まさか自分で墓穴掘るなんてさすが大和!最高だね!」 「お前……ムカつく。元はと言えばお前がっ…!」 「あーはいはい。ごめん、逢坂くん。私は電車に乗れない理由が出来ちゃったからここまででいい?」 「あ……はい」 「本当にごめんね。気を付けて帰ってね。また連絡するから。今日はありがとう、とっても楽しかった!」 「こ、こちらこそ!」 「じゃぁまたね!大和、行くよー」 「……って、おい!待て!」 トントン拍子で話を片付けた悠はさすがというか、そんな悠に振り回されながらも。 振り回されんのも嫌いじゃねーかもな、なんて少しだけ考えながら。 悠から引いてくれた俺の腕を見ながら、嬉しさを一生懸命、顔に出さないように押し殺した。 .
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