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すっかり、光の中に棘があって剣山で素肌を刺すような暑さになった7月。
高校3年の期末試験という大事な試験を前に、空雅は私の目の前でペン回しを華麗に決めている。
「空雅くん、とっととこの問題を解き終わらないと日向特製のマンゴームースはお預けだからね」
「えぇっ!?そ、それはマジで勘弁!」
「だったら早くやりなさい。マジでお前の成績ヤバいんだし、大学に行かないとしても卒業できなくなったらどうすんのさ」
「まぁ何とかなるっしょ!」
「ならないから言ってるんだけど」
バカみたいにポジティブなこいつは、危機感というものを本当に知らないらしい。
「悠、諦めたほうがいいぜ。こいつに勉強なんて無理無理。いっそのこと留年させてもう一回高校生活やり直したほうがいいって」
「なんだよ大和!もう制服が着られないからって妬んでるんだろ!?そうなんだろ!?残念だったな!」
「バカザル、いくらでも言ってろ」
バイトから帰ってきて向かいのソファでサックスの手入れをしていた大和。
いつも丁寧に時間をかけて磨いているアルトサックスは、本当に大切なものなんだな。
「あー……築茂、来てくれないかなぁ。あとは日向。あの2人が来てくれればバトンタッチしてもらえるのに」
「築茂だけはマジで勘弁!あいつにスパルタは本気で怖いんだかんな。マジでさらにやる気なくすし」
「愛花がいればなぁ。何が今日はピアノのレッスンだから、だよ。あいつだってヤバイんだから勉強しろって」
「まー、別にいんじゃね?」
何こいつ、自分のことはともかく、彼女の心配はもう少しするべきでしょ。
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