第8恋

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見慣れた職員室の風舞先生のデスクへと向かえば、何かの資料を見て考え込んでいるご様子。 「風舞先生」 「あぁ、神崎。先に生徒指導室の鍵を持って行っててくれ。すぐに行くから」 「はい」 言われた通りに鍵を持って、生徒指導室の明かりをつけてイスに座った。 生徒指導室に呼び出すくらいだから、何か相当なことだとは思う。 「待たせたな」 「いえ、大丈夫です」 思った以上に早く来た風舞先生は、いつもと何ら変わらない表情で私の目の前に座る。 最近、気のせいなのかもしれないけど、文化祭が終わってから風舞先生の私への態度が少しおかしい。 気のせい、なのかもしれないけど。 「呼び出した理由が分かるか?」 「いいえ、全く」 「単刀直入に言う。本当に大学に行く気はないんだな?」 「はい」 「……そうか。実は、この時期になってさまざまな大学からお前への入学希望が来ている。入学金、受講料、すべてを免除するというほどまでに」 ついに大学側も本格的に来たってことかぁ。 「期末試験もすべて満点だったし、内申書も文句の言い様がない。4月に行った全国の模試も素晴らしい成績だった」 「社会に出たら成績なんて関係ないですよ。別に習ったことを覚えているだけです」 「そう言えるのはお前くらいだよ。お前のその能力はどんな大学に行ったとしてもかなり生かせる。逆を言えば、大学に行かないのは勿体なさすぎる」 私、こういう話、大嫌いなんだよね。 どんな能力を持っていたとしても、私にその気がないなら何をやっても虚しいだけだ。 自分の人生は、自分の好きなように生きたい。 .
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