第1恋

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あれよあれよと、新学期に入って本格的な授業は終わり、放課後。 新担任に言われた通りに昼休みのうちに放送は流しておいて、今から生徒会の集まり。 まぁ、入学式も終わったし、後の大行事と言えば6月の文化祭だ。 文化祭………これからまたいろいろと忙しくなりそうだな。 「えー、今年から生徒会の担当をする風舞昭晃だ。3年A組の担任もしている。分からないことだらけだから、いろいろと頼りにしてるぞ。よろしくな」 ワイルドさ全開の新担任。 一応生徒会役員も全員が自己紹介を終えて、新担任はあるプリントを私に渡した。 紙にはやっぱり文化祭のことで、私は一枚を取って隣に回す。 「6月25日に文化祭がある。俺はどんなものだか分からないが、他の先生方に聞いたところ、基本的に自由そうだ。生徒会が何か企画を作ってくれとのこと」 ……やっぱり、そうですよねぇ。 「今日は一応、これを頭に入れておいてくれればいい。来週の月曜日の放課後から、本格的に話し合おう」 「はい」 では解散、と言われ私も荷物を持って席を立ち上がる。 「神崎」 目だけで話がある、と言ってるのを悟り、大人しく席に座りなおした。 全員が出て行ったのを確認して、私は新担任に向かい合う。 「昼間も何かお話があったみたいでしたけど、どうかしましたか?」 「あぁ、そうだな」 曖昧な返事をして新担任は生徒会室のカーテンをすべて、綺麗に閉めた。 「……」 「……?」 中々話を切り出さない新担任の顔を覗き込むと、瞳を泳がせる。 一体、この人は何がしたいんだろう。 「まぁ……そうだな。俺はまだこの学校のこともよく知らないから、生徒会長のお前にはすごく頼ると思う」 「はぁ……全然大丈夫ですけど」 「でもお前は……俺が、担任になったことは、嫌…だったか?」 「はい?」 腕と足を組む姿はデキる男って感じなのに、言っていることがおかしいような。 「今日、お前が前の担任の先生と話してる内容、聞こえてしまってな。すごく、あの先生を信頼していたみたいだから」 「あぁ、そうですね。あのバカ真面目な元担任はすごく信頼してるし、好きです」 「そうか……」 「だけど新担任のこともこれから知るんですから、今そんなこと言っても仕方がないですよ。1年間、よろしくお願いしますね」 ふふ、と微笑めば、一瞬驚いたような表情をした後に、柔らかく目じりを下げた。 .
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