343人が本棚に入れています
本棚に追加
/842ページ
何だ、こんな優しい顔もできるんだ。
「その顔」
「え?」
「その顔のほうがずっといい。ワイルドそうだけど、実はすごく優しいって感じ。さらに女の子にモテますよ」
「ははっ、それは嬉しいな」
やっと声を上げて笑った新担任に、私もつられて笑った。
新しい学校に赴任してきて、いきなり受験生の3年の担任、それに生徒会の担当までやらされたらプレッシャーはすごいと思う。
「大丈夫ですよ。私に出来ることがあったら何でも言ってください。新担任のサポートを全力でします!」
「それはすごく心強いな。助かるよ、神崎」
「任せて下さい」
「それより……その“新担任”っていうのはやめないか?何か、距離を感じるっていうか…」
「あ、失礼でしたね。ごめんなさい。風舞先生」
「あぁ、それがいい」
ふふふ、と微笑み合った。
それから風舞先生の前にいた高校の話や、うちの高校での話、クラスメイトたちの話をして。
気付いた時には、もう日が暮れていた。
「あちゃー……わりぃな、神崎。話に夢中になってこんな時間になってしまった」
「それは私も同じです。仕事、忙しいのにすいません。じゃ、今日はこれで」
「あ、それと!」
慌てたように携帯をポケットから取り出した風舞先生に、私も同じように携帯を探した。
「連絡先、教えてもらえるか?生徒会でいろいろ連絡することがあると思うから」
「はい、もちろんです」
「あとこれは……」
「分かってますよ。誰にも言いません。元担任のときもそうでしたから」
「………ありがとな」
赤外線で交換して、携帯をポケットにしまった。
「それじゃ、さようなら」
頭を下げて、生徒会室を後にした。
.
最初のコメントを投稿しよう!