343人が本棚に入れています
本棚に追加
/842ページ
後ろのベンチにいる櫂さんの方を見て、さっきまでのことを簡単に話すと。
「あぁ、確か声楽専攻の伊波くん」
「はい。部活だったんですね、お疲れ様でした」
「悠がお世話になったみたいだね。ありがとう」
「とんでもないです」
煌は私の保護者ぶりを発揮させた。
「ちょっと、煌!ここまで来てお母さん面しないでいいんですけど」
「ははっ!仕方ないだろ、ちょっと心配になったし」
「全く、お前たちは過保護すぎだ」
「そういう築茂だって内心焦ってたくせに~」
「黙れハゲ」
「うっ……」
追いついた築茂と煌のやり取りに、隣に立った日向と顔を見合わせて、笑った。
そんな私たちを櫂さんが不思議そうに見つめるけど、私たちワールド全開だ。
昼食をとるために増えてきた大学生たちの視線が、次第に多くなっていることに気付く。
『ねぇ!あれって……』
『うっそ!あの神崎悠じゃん。久しぶりに見たー』
『また春日井たちといるし。どんな関係?』
『伊波さんまでいるけど。もう1人は誰だ?』
『1年だよ。学年主席だった奴』
『ってか何で神崎悠がここにいるんだろ?』
おうおう、早速野次馬たちが寄ってたかって来ました。
「まずい!悠はここにいちゃダメだ!」
「まさかとは思ったけど、こんなに注目されるんだね」
「日向、何呑気なことを言っている。俺は一度、悠との現場を目撃されたせいで散々な目にあったからな」
「あ~懐かしいねぇ~。じゃ、とりあえずこれお弁当。私は早く退散しますよ」
午後もまだ部活があるみたいだし、私がここにいるといつ、あのしつこい教師たちが来るか分かったもんじゃない。
「本当にありがとね。悠」
「いいえー!それじゃ、私は行くね」
「気を付けて帰れよ」
「変な人に着いて行っちゃダメだからな!?」
「全く、どんだけ過保護な保護者だよ」
苦笑いしながらも、頷いて荷物を持つ。
「あ、櫂さんもありがとうございました。それではまた」
「……あぁ、はい。お気をつけて」
櫂さんと3人に手を振って、足早に大学を後にした。
.
最初のコメントを投稿しよう!