第2恋

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「と、いうわけで。文化祭の企画は学年ごとの廊下に意見BOXを設置して、多かったものを採用するという形でいいですね?」 生徒会の集まりは、すでに文化祭への準備へとスイッチONに。 「では明日の朝に設置をお願いします。お昼に私から生徒の皆さんには放送をしておきますね」 これで今日は、解散っと。 荷物を持って席を立ちあがり、役員全員が出るのを待つ。 「神崎先輩!この前、アップされた動画も見ました!僕、あの曲すごく好きです。特に神崎先輩のピアノのソロのところがっ」 「そう?ありがとう。リクエストとかあったらやってアップするから、言ってね」 「本当ですか!?じゃぁ考えておきます!」 後輩の逢坂くんは、相変わらず可愛げな瞳を瞬かせて私を見上げる。 くそう、なんて可愛いんだこの生き物は。 逢坂くんと話しながら風舞先生が出るのを確認してから、生徒会室のドアを閉めた。 「神崎先輩、鍵は僕が返しておきます」 「本当?ありがとう!ちょっと急いでるんだよね。じゃ、よろしくね。バイバイ!」 優しすぎる逢坂くんに鍵を渡して、何か言いたげな風舞先生に会釈をしてから。 急ぎ足で昇降口へと向かった。 どうして私がこんなに急いでいるかと言うと、今日はテレビでハモネピがやるのです。 地区大会が去年の冬から行われて、全国大会が先月行われたらしい。 機会があれば出てみたいと思っていたけれど、フランスのことや柚夢のことがあって、全く知らなかった。 でも、それでよかったかなと思う。 私たちの音楽を他の誰かと競って1番を目指すことは、私たちが本当に望んでいることではないから。 1番の望みは、私たちの音楽で聴いてくれる人を笑顔にすること。 それはあのハモネピの大会に出なくても、動画サイトを通して叶えられていると思うから。 時には競い合うことも大切なのかもしれないけど、今の私たちには必要ない。 つい最近、やっと大切なものを手にしたばかりなんだから。 .
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