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あ、思い出した。
3日前に煌が言っていた単語だ。
「あのさ、その銀髪の人って髪の毛を1本に結んでない?」
「え、何で分かったの?」
あぁ、やっぱり。
……と、いうことは煌が言っていた『見かけたら全力疾走で逃げて』の相手ってことか。
『た、たた大変!!!こっちに向かってくる!』
『キャァァァ!!』
『本当にこっちに来てるよ!?』
さらに悲鳴の色が濃くなった廊下では、何やら軽いパニック状態が起こっているらしい。
「え、何かこっちに向かってるとか聞こえなかった?」
「空耳じゃない?」
「いやいや!え、えぇ!?何か人がどんどん割れて……」
と、愛花はある一定の場所を見つめたまま動かなくなってしまった。
「あ?」
まるでメデューサと目が合ってしまったかのように固まった愛花の視線の先を私も追ってみると。
銀髪で後ろ髪を1本で束ねて、白いスーツをスマートに着こなした綺麗な男の人が、教室のドアに立っていた。
ポケットに手を入れてゆっくりと近づいてくる綺麗な男の人は、気のせいではないだろうけどじっと私だけを見ている。
教室の外ではたくさんの野次馬が私たちに注目していて、映画のスクリーンの中にいるようだった。
「こんにちは」
にこ、とそれだけで花びらが舞うような笑顔に愛花は顔を真っ赤にさせている。
こんな愛花を空雅が見ていたら激怒するだろうけど、生憎当の本人は見当たらない。
どっかで教師に捕まって説教でもされているんだろう。
「ちょっとその子と話したいんだけど、いいかな?可愛い可愛いレディ?」
「へっ!?あ、はははい!!もちろんです!それじゃぁ私はこれでっ!!」
と、一目散に逃げ出した愛花に呆れながらも私は席から立ち上がって銀髪の男の人と向き合った。
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