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近くで見ると、本当にモデルみたいなオーラをしていて、瞳はグリーン。
たぶんこれはカラーコンタクトだし、髪色も染めているから日本人であることには間違いない。
だってこの胡散臭い笑顔、誰かさんにそっくりなんですもん。
っていうか、煌に全力疾走で逃げろと言われたけどもうここまで近づいてしまったら逃げられないですね。
どんな相手かも分からないけど、一応挨拶くらいはしておかないと失礼だよな。
そんなことを数秒の間に考えていると、銀髪の男の人は突然私の右手を取って。
「やっと会えたよ。My Princess」
慣れた手つきで、手の甲に唇を落とした。
その瞬間、ものすごい黄色い悲鳴が学校中に響き、思わず顔を歪める。
でもって煌の言葉の意味がよく分かって、白けた目で銀髪の男の人を見つめた。
「……あれ?そんな顔をする女性は初めてだ」
「それはあなたの目が節穴だからでしょうね。大変失礼ですが、手を離していただけますか?」
「まさか!この僕にこんなことをされて喜ばない女性がいるなんて、あり得ない」
「いやいや、何したかとかは別にどうでもいいので。ここは学校だということが問題なんですよ。もちろん、あなたに何されても何とも思わないので安心して下さい」
ゆっくりと銀髪の男の人から手を抜き取って、にこやかな笑顔で答えた。
あぁ……明日から意味の分からない噂が流れているんだろうなと思うだけで、眩暈がする。
平穏に最後の高校生活を過ごしたいんだから、本当にこういうのは迷惑だ。
「……unbelievable!さすが、あいつが興味を持つ女性だな」
なるほど、そういうことですか。
「で、こんなところまで何の御用ですか。春日井さん」
「あれ、僕の名前ばれてたの?」
「春日井煌のお兄さんであることは分かります。ですが、私とあなたには全く面識はないはずです」
「Oops!これは只者じゃないな。ますます気に入ったよ」
ダメだ、この人にまともな会話は通じない。
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