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「ん………」
ぼやけた視界。
知らない温もり。
目の前には裸。
…………あれ?
「っ…!?」
これは夢でしょうか、いや夢でなければ大変なことだと思います。
どうして、私はキャミソール1枚で、目の前にいる彼は裸なのでしょうか。
「んん~……あ、Good morning」
夢じゃ、ない!?
お、落ち着け私、落ち着くんだ私。
えっと、いきなり煌のお兄さんが現れて強引に車の中に押し込まれて。
お茶でもしようよって言われて、お店に向かう途中に……私が、寝てしまったんだ。
とりあえず今は何時だ!?
白と黒で統一されたこだわり感と大人なイメージの部屋にある時計を見つければ、針は8時過ぎを示していた。
フロアベッドのすぐ隣には窓があるのか、カーテンがしっかり引かれていて、バッと開けてみれば空は暗い。
よ、よかった……まだ夜の8時か…って、よくない!!
早く家に帰ってご飯の準備しないといけないし、大和たちに心配させちゃう!
私は慌てて携帯と自分のカバンを探す。
2人掛けの黒い革製のソファに、私のカバンと制服が綺麗に置かれていた。
携帯を取るためにベッドを抜け出そうとすると、ガシッと手首を掴まれる。
無表情で振り返れば、ベッドに肘をついて面白くなさそうに私を見上げる遼さん。
「帰ります」
「What?何があったのか、何も聞かないの?」
「何もなかったことは分かりますから」
「そんな格好で?僕も裸なのに?」
「はい。何もなかったんですよ」
立ち上がって初めて、下はパンツ一枚だけであることに気付く。
まぁ、別にどうってことはないんだけど。
着替えるよりも先に携帯を探って、赤いランプが光っているのが分かる。
小さなため息を吐いて、画面を明るくすると新着メール8件と未着信6件の文字。
……このこと、話すのも話さないのも嫌だなぁ。
特に、煌には。
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