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とりあえず遅くなったのと連絡できなかった言い訳を考えなくちゃ。
いや……待てよ、空雅は学校で私と遼さんを見ている。
ということは、絶対に煌たちの耳にも入ってるよ!
「うぅ~……」
ベッドから私をじっと見つめる遼さんのことなど、空気のようにしか思っていない私は、必死に頭をフル回転させていた。
「……そろそろ、着くころかなぁ」
と、遼さんが呟いた意味深な言葉は私の元に届かず、ゆっくりと近づいてくる気配にも今の私には気付ける余裕がなかった。
だから。
バンッ!!!
と、私たちがいる部屋からそのまま繋がっている玄関の扉が勢いよく開いた音と。
ぐっと、腰と肩を引き寄せられて、視界いっぱいには遼さんの顔が映し出されたのは。
同じ、タイミングだった。
キャミソールと下着だけの私と、同じく上半身裸の遼さんが“キス”をしていて。
「……っ…」
この光景を誰かに見られたことは、すぐに分かった。
「……った…」
遼さんに数秒キスをされてすぐに、腕に今まで感じたことのない鋭い痛みを感じた。
そしてすぐに、目の前には大きな背中。
「……Hi、煌。久しぶり」
私を遼さんから一切見えなくなるように背中の後ろに隠して、腕は顔を歪めるほどに強く掴まれている。
何も言わない、息をしているのかすら分からないほどに煌は無言だった。
無言の圧力と殺気が、尋常じゃなかった。
「彼女、very cute!僕、気に入ったよ」
「……何が、したいんですか」
「彼女は僕のMy Princessだ。これから僕の虜にするよ」
遼さんがどんな表情で言っているのかも、煌がどんな表情で遼さんを見ているのかも。
私の位置からは、分からない。
無言で睨みあっていることは分かったんだけど、とりあえず。
服を着たいのと、腕が痛い。
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