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思いっきり2人の世界にいた私たちは、すっかり遼さんの存在を忘れていた。
「……Give me a break!」
勘弁してよ、と叫んだ遼さんにようやく私たちはハッとする。
さっきまでの優しい表情が一転、強張った煌に私は微笑んだ。
「遼さん、弟の気持ちを弄ぶのがそんなに楽しかったですか?」
煌の腕にしっかり掴まれながらも、遼さんを真っ直ぐに見つめた。
煌と遼さんの関係があまりよくないことは分かったし、遼さんは私に興味を持ったんじゃなくて、弟が興味を持ったから手を出してきただけ。
弟のお気に入りを、奪いたかっただけ。
きっと、私が寝ている間に自分との写メを撮って煌に送ったんだろう。
そして来るタイミングをしっかり計算した上で、この格好で行動を起こした。
煌に、見せつけるために。
「2人の兄弟関係に私が首を突っ込むことはしないほうがいいとは思います。だけど、1つだけ言わせてください」
つまらなさそうに私を見下ろす遼さんに、にこりと微笑んで。
「私はあなたに興味がありません。煌を傷つけようとしているなら、私はハズレだと思います」
そう言い切って、ようやく制服に手を伸ばした。
「……悠、ごめんな。腕、痛かっただろ?」
「うん。でも大丈夫。私こそごめんね、心配かけちゃって」
「それについては家でゆっくり話そう。早くここから出たいからね」
「私も。もうちょっと待ってて」
もう、煌も遼さんには何も言わずに私が着替えるまで待ってくれていた。
ぱっぱと着替えて荷物を持ち、玄関へ向かおうとしたら。
「あははははっ!はははっ!」
後ろから、盛大な笑い声が聞こえてきた。
あまりの気持ち悪さに顔を引きつらせながら振り返ると、お腹を抱えて笑っている遼さん。
ついに頭おかしくなったかな、この人。
「ははっ……I was surprised.こんなにムカついたのは久しぶりだ」
笑い声が一瞬にして、黒い声に変わった。
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