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僕はね、とゆっくり私たちへと近づきながら言葉を続ける遼さん。
「ほしいと思ったものは何でも手に入れる。今まで手に入らなかったものはないんだよ」
全く、煌と本当に血が繋がっているのかって疑いたくなるセリフだな。
笑った顔は確かに似ているけれど、中身は似てるところは何一つない。
「だから、絶対に君を手に入れる。神崎悠。いや……My Princess」
まだそれ言うか、と内心呆れながら、拳を強く握りしめた煌の手を握った。
「じゃぁ私が、あなたの手に入らなかったもの第1号になってあげる」
そう言い残して、そのまま煌の手を引いてこの家から出た。
バタン、と玄関を閉めてすぐにため息を吐く。
物凄く疲れたというか、また厄介ごとが起こりそうだな。
「………悠」
繋いでいた手を引き寄せて、煌も同じように静かに息を吐いた。
私の首元に顔をうずめて、頬をすり寄せてくる。
そんな煌が可愛くて、ふふっと笑うと肩の骨も砕けそうなほど激しく抱きしめられた。
「もうさぁー………さっきのマジで、堪えた。どうしてあんな格好で…あいつの前に、普通にいれるわけ?もう、気が狂いそう……」
耳元で掠れた声で囁く声は、波が引くように小さくなる。
我ながら、ベッドから抜け出してすぐに服を着なかった浅はかな考えに、不快感が伴う。
私自身がどんなに気にしていなくても、それを知った煌は傷ついている。
私1人の考えだけじゃなくて、煌や他の彼らの気持ちも考えるべきだった。
「……煌、ごめんね。たとえ何もなかったとしても、あんな格好で男の人の前にいるべきじゃなかった」
「全くその通りだよ。もうマジであいつ……ムカつく」
煌の心の中の嫉妬を鮮明に感じる。
ゆっくりと身体を離した煌が私を見下ろすその瞳には、ありとあらゆる不安を集めていた。
「口……開けて」
放心したような指先で私の唇を優しく撫でながら、悲しいようで力強く、朗らかなようでいてどこか哀れな声で囁いた。
言われた通り小さく唇に隙間を開けて、気配を窺うような上目遣いで見つめる。
しばらく何度も繰り返し私の唇を薄硝子の人形でも撫でるように、そっと撫でて。
目がくらむほど、切なく激しい口づけを、した。
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