第2恋

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逃げるように立ち去って、自室のドアを閉める。 帰ってきてからまだ何も口にしていないことに気付いたけど、そんなことはどうでもいい。 大和たちの夕飯は、日向が来てくれたから大丈夫だったらしい。 今日もきっと、いつも通りに泊まるか勝手に帰るかするはずだ。 とりあえず、いろいろありすぎて疲れた私はベッドに勢いよくダイブ。 「あぁー………おもしろかった」 いや、間違えた。 「あぁー………疲れた」 うん、どっちも本音なんだと思う。 少女漫画に出てくるような純粋な女の子じゃないから、たかが唇1つ奪われたくらいで大騒ぎすることもなく。 モデルのような綺麗な男の人に連れ去られるところを学校の生徒に目撃されたことに、優越感を感じることもなく。 私はただ、煌と遼さんの関係が気になった。 煌には絶対に近付くなって言われたばかりだけど、何かしらの方法で遼さんから接触してくるはずだ。 その時は煌やみんなに連絡して逃げろって言うけど、そんな悠長なことはできないと思う。 今日の遼さんなら、どんな手を使ってでも私を利用して煌の心を玩具のように弄ぶだろうな。 ……考えただけで、ちょームカつく。 そんなことを思いながら顔を枕に埋めていると、マナーモードにしておいた携帯の振動が聞こえた。 前にマナーモードはやめろって煌に言われたけど、授業中は基本的にマナーモードだから仕方がない。 動きたくないなぁ、と思いながらもゆっくりベッドから下りて、カバンの中から携帯を取り出した。 新着メール4件の中に、あり得ない名前が。 『My Prince』 ……なんとまぁ、手の早いことでしょうか。 私が寝ている間に、人の携帯をいじくって勝手に登録したのか。 たった今からロックをかけてやる。 恐る恐るメールを開くと、眩暈がするほどのハートマークが並べられていた。 『Hi,My Princess!今日はvery楽しかったね。今度は邪魔されないところでゆっくりしよう。今週の土曜日はどうかな?I wait for an answer』 メールの中でも英語と日本語を混ぜるって、頭大丈夫かな。 こんな文章で、はいそうですか分かりました、なんて返す奴がいると思ってるのかね? いや、実際に今までそうだったからこれが普通だと思ってるんだろう。 本当の普通なら、あんなことがあった後に見知らぬフリしてメールなんて出来ない。 思っていた以上に、手ごわそうだ。 .
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