第2恋

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なだらかな弦楽のメロディ、ガラスの楽器のような澄んだ音色、柔らかい音楽が連日のおびただしい疲労をとかしてくれる。 「悠!!!」 しかしそれも、長くは続かなかった。 今までどおり、誰よりも早く教室に入り、静かな教室の中でイヤホンを耳に自分だけの世界に入っていたけど。 それも時間の流れと言うのは皮肉なもので、永遠に自分だけの世界には留まらせてくれない。 「ちょっと!?昨日のは一体どういうこと!?あんた、あんだけの男たちに囲まれてるくせにまだあんな人が裏に隠れてたの!?」 「……やぁ愛花。朝から元気で何より」 「話をそらすな!きちんと説明してくれるよね!?あんたがずっとこんな調子だから、あちこちでいろんな噂が立ってるんだけど!」 「あーそう、それはご愁傷様です」 「はぁ!?あんた自分の立場分かってんの!?」 キンキンと刺し貫くように響いてくる愛花の声に、奪われたイヤホンを取り戻そうと手を伸ばしてみるものの。 「いい加減に……しなさい!!」 どうやら地雷を踏んでしまったようだ。 あぁ……全く、こうなるって分かってはいたけれど予想以上にひどいらしい。 教室の中からも、教室の外からもたくさんの視線に注目されていた。 「で、どうなの?あの綺麗な男の人、イギリスですごいカリスマ美容師だって噂があるんだけど」 おっと、これは事実の情報が出回っているなんて珍しい。 「そんでもって悠の婚約者だって」 うん、それは誰かが面白おかしく話を作って人に伝わって行ったんだな。 「イギリスが大好きな子が、あれは絶対にカリスマ美容師のリョウだって騒いでるよ。悠と話したくてうずうずしてるって」 ……もしかしたらこれは、遼さんのことを知るいいきっかけになるかもしれない。 本人には聞けないようなこととか、イギリスでの様子を聞き出せたらかなり強いぞ。 いや、でもそしたら私たちの関係を話さないといけなくなるな。 んー……リスクはかなり大きいかもしれないけど、もうここまで話が大きくなってるんだから同じことか。 「ね、その子に会いたいんだけど」 「……やっぱり噂は本当なの?本当に婚約者なの!?」 「まぁそう思いたければそういうことにしといて。で、早くその子の名前とクラス教えて」 目を皿のようにして驚く愛花の頭を軽く叩いて、その子のことを聞きだした。 .
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