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私の核心を突いた言葉に、遼さんは心臓に氷水を注ぎこまれたように驚く。
ただじっと、その青白い顔を見つめた。
「………はは」
しばらくの沈黙の後、乾いた笑いを零した遼さんは冷めたコーヒーに手を伸ばした。
「……どうしてそう思ったんだい?」
「ワインやお酒がすごく好きだったのに、女性にかけられたくらいで飲まなくなるなんてまずあり得ません。ドクターストップにかかったと考えるのが普通です」
「それだけ?」
「I駅に着いた時、実は遼さんの車の目の前に繋がる通りに出ようとしました。だけど車の中で薬を飲んでいるのを見て、遠回りをしたんです」
「……I blew it」
失敗をしてしまった、と言っています。
とは言っても、今の段階でどんな病気でどれほど重いのかは分かるわけもないんだけど。
「どんな、病気なんですか」
「……肺炎だよ。病院では検査が必要と言われたが、逃げてきた。もう死ぬのなら、最後に育った地で静かに死にたいんだよ」
深い失望を感じさせる遼さんの言葉に、私は静かに耳を傾けた。
「今まで稼いできたお金で残りの人生は遊ぼうと思ってね。そして僕が死んでも、煌と母さんが別に悲しまないように、煌の嫌がることをしようと思った」
バカだな、この人。
「最後の最後まで、僕は孤独の中で生きようと思ったんだ」
雨に濡れた子犬みたいに心細げな遼さんに、今日の雨はピッタリだな。
「はははっ……誰にも、言わないつもりだったんだけどな」
私もこんなにすんなりと吐いてくれるとは思っていませんでしたよ。
「で、どうしますか。私はこのことを煌に話しますけど」
「Only good things,I hope……」
今のは、まいったなぁという意味です。
いちいち、訳すのもめんどくさいから普通に日本語で話してくれないかな。
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