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「悠………これは、どういうこと?」
目の前には、怒りでどうにかなりそうな煌様のお顔があります。
「煌に話があるんだ」
隣には、人の気も知らないでニコニコとしているお兄様がおられます。
「……ごめん、煌。怒らないで話を聞いてほしい」
「俺は二度とこいつに近付くなって言ったはずなんだけど?しかも今日は青田さんと出かけていたんじゃなかったの?」
「はい嘘つきましたすいません」
さっさと暴露してしまったほうが後々楽だから、早送りで答えた。
「はぁー………」
草のような息を1つ吐いた煌が立つ場所は、煌の家の玄関。
初めて来た春日井家に、ただいまから家宅捜索をしたいと思います!
「家の中はお邪魔だと思うから、外に出ない?」
「……いいよ、中に入って。母さんはいないから」
「どうしてだい?」
「パートの仕事に行ってる」
怪訝な表情で聞いた遼さんに冷たく言い放つと、煌はそのまま家の中に入って行った。
私と遼さんは一度顔を見合わせてから、玄関をゆっくりと開けて、恐る恐る中へと入る。
「……変わってないんだな」
「そうなんですか?」
「あぁ、僕が住んでいたころとあまり変わってない」
懐かしそうに、ちょっと嬉しそうに言った遼さんは器用に靴を脱いで、さっさと中へ入ってしまった。
私もちょっと戸惑いながらも、2LDKのアパートの部屋へと入る。
私の家よりもずっと、生活感が溢れている。
「ここに座って」
「……はい」
明らかにお怒りモードの煌に言われるがまま、正座で座布団の上に座る。
「悠はこっち」
と、遼さんの隣に座ろうとしたのを無理やり腕を引っ張られて、煌の隣に座らせられた。
いやぁ、この席だと何倍も寿命の縮みが早くなりそうな気がするよ。
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