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宇宙がこの部屋ひとつになったような緊張が、部屋いっぱいに張りつめる。
それを感じているのは、私だけなのかもしれないけど。
「……説明、してもらおうか」
そう、低く平らな声で呟いた煌に、私はゆっくりとさっきまでのことを話し始めた。
時々、遼さんが口を挟んでくるたびに煌は一気に殺気立った顔つきに変わる。
そんな2人を交互に見ながら、私は話を続けた。
「肺、炎……?」
と、病気のことを口にしたときに初めて、煌の遼さんを見る目が変わる。
信じられないと疑い気に遼さんを見るけど、私が本当だよと言えば、すぐに信じてくれた。
うん、別に嘘はついていないから大丈夫。
「じゃぁ兄さんは……病気だから沖縄に帰って来て、そのまま死のうとしているのか?」
「That's right.悠ちゃんに近付いたのも、煌に僕のイメージを悪く残したままにしようと思ったからだ。でも悠ちゃんと話して、気が変わってしまったよ」
最初のニコニコとおどけた表情は消え、怪しいほど真率な表情が漲る遼さん。
そんな遼さんの姿を、煌はどう受け止めていいのか分からない様子だった。
「ちょっと、いきなりそんなこと言われても……意味が分からないんだけど。じゃぁなに?兄さんは……もう、長くは生きられないの?」
「………」
肯定も否定もせずに、ただ小さな笑みを浮かべるだけの遼さんに。
煌は、思っていた以上に衝撃を受けたようだ。
「今までのこと、ずっと謝りたかった。母さんにも大変な想いをさせて、後悔してる。もう恩返しなんてしている時間はないかもしれないけど……それでも、言っておきたかった」
短時間でなんという進歩でしょうか。
「今まで本当に、ありがとう」
2人の間にはすごく感動的な雰囲気が流れているのだろうけど、残念ながら私は顔を引きつらせないようにするので精一杯。
後で病院に連れて行くのが、ちょっと怖い気がしてきたよ。
「……なんだよ、それ」
「え……?」
「何で今さらそんなこと言うんだよ!しかも……死ぬって…母さんに何て言えばいいんだよ!」
「本当にごめん。母さんには僕が死んだ後にすべて話してくれ。生きているうちに会うことはできない。ただ、ありがとうだけ言いたかったな」
「ふざけんな!治療も何もしてないんだろ?だったら入院して、治せよ!治して母さんに会えよ!」
「いや、もう手遅れだよ」
「……ふざ、けんな…」
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