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ますます言いづらくなってしまった。
……ま、本人も気づいていないなんてバカとしか言いようがないから仕方がない。
「煌、こんなお兄さんだけどさ。私に近付いたのは煌がいたからであって、私には興味がないんだって。だからもう、そんな反発しないでほしいな」
「それは……」
「もちろん、昔のことをすぐに許せるわけはないと思うけど。それでも、たった1人のお兄さんでしょ?」
「悠……俺は……」
「煌も本当は、ずっとモヤモヤしていたんじゃない?こんな関係のままがいいはずないって。だから今、ショックを受けているんでしょ?」
煌の手を優しく包んで、言葉を繋げた。
「煌、許せなかったら許せなくてもいい。だけど、自分の気持ちに嘘はついちゃダメだよ。きちんと、お兄さんに本当の気持ちを言って?」
「………悠」
いつもの頼りがいのある煌じゃなくて、弱々しい煌に微笑んだまま、見つめると。
ぎゅ、と私の手を握り返して、顔を遼さんへと向けた。
「兄さん、俺」
「……うん」
「兄さんが死ぬなんて、嫌だ」
「煌……」
「治療をして。何か方法があるはずだから。諦めんな」
「煌、ありがとう」
うん、いいねいいね、兄弟愛。
「じゃ、病院に行こう!早く分かったほうがいいでしょ!」
結果が見えている私は、煌の手を取って立ち上がらせ、急かした。
そして見事結果は。
「確かに、肺炎です」
それは分かっています。
「ですが、とても軽いものなので入院は必要ないですよ。薬を飲んで煙草とお酒を止めていれば、1週間ほどで治るでしょう」
私の予想通りでした。
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