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突然の出来事に、私はなすがままに。
「ははっ!煌がこんなに嫉妬心が強かったとは驚きだ。その理由もよく分かったけどね」
「……兄さん、本気なのか?」
「さぁ?でも少なからず、今までとは全然違うものを感じている。Be prepared」
「………」
覚悟しときな、って煌に何を覚悟させたいんだろう。
静かに睨み合ったままの2人を私は煌の腕の中で大人しく見ていたけれど。
「とりあえず!兄弟喧嘩は結構だけど、帰るよ!2人とも目立つんだから!」
病院の中にいる患者さんやナースさんたちがちらちらとこっちを見ているから、一刻も早く立ち去りたかった。
「……悠、家まで送ってく」
「おっと、それは僕がするよ」
「いい。兄さんは悠の家の場所、知らないでしょ」
「教えてもらえば何の問題もない」
「悠!絶対に教えるなよ!」
「悠ちゃん、教えてくれるよね?」
……なんなの、このバカ兄弟。
「はいはい、私は1人で帰りますので駅までこのまま送ってもらえれば結構です」
でも仲が良さそうだから、もう大丈夫でしょ。
「遼さんはまた煌の家に行って、今度はお母さんとしっかり話してみて下さいね。約束ですよ」
「You bet!」
もちろん、と笑顔で頷いた遼さんに私も笑顔を返して。
「さ、帰るよ~」
遼さんの車の後部座席に乗り込んだ私の後ろ姿を、煌が何とも言えない表情で見つめていたなんて。
この時の私はまだ、知らない。
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