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やれやれ、と首を振りながら隣に座って、私の髪の毛に指を通す柚夢。
「で、煌の怒っている原因は?」
「それが分からないから困ってるんです!私がちょっとハメたからだと思ったんだけど、昨日はそんなことじゃないって言ってたし」
「煌のお兄さんが何か言ったんじゃない?」
「何かって?」
「煌を挑発するようなこと」
「えぇー、もうあの人は私には用がなくなったはずだからそれはないと思うけど」
「………なるほどね」
何か勝手に納得した柚夢は、私の頭を一度優しく撫でて、ソファから立ち上がった。
「はい、悠」
「ありがと日向!」
冷たいレモンティーを淹れてくれた日向は、大学のレポートをやり始めた。
隣で大和はバイクの雑誌を見ていて、玲央はレイとじゃれている。
ソファから立ち上がった柚夢は、煌と何やら話していた。
あ、そうだ。
こんなことしてる場合じゃない。
バンド関係の人に電話してほしいって言われてたんだっけ。
たぶん、私が作った曲のデモ音源を聞いてほしいとかそんなことだと思う。
私は携帯を持って、家の外へと出た。
7人が知らない人と電話するときは、いつも外でするようにしている。
電話相手の声が聞こえるだけで、探るような気にしているような視線を感じるから。
さっさと電話を終わらせて、家の中に入ろうとしたら。
「……ビックリしたー」
「随分、楽しそうな電話だったな」
「あ、喋った!ってか全然普通なんですけど」
玄関に寄りかかって腕を組んでいる煌が、いた。
「悠はそうやって、男を無意識に虜にする。俺がどうして怒ってたか、分かる?」
「教えてくれるの?」
「教えないといつまでたっても分からないままで、悠は成長しないから」
「……はい、すいません」
いろいろ言い返したいところだけど、この機会を逃したら一生教えてもらえなさそうだから、大人しく首を窄めた。
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