第3恋

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だいぶ傾いた陽が影法師を細長く斜めに地に映す。 「兄さんはもう、悠に興味はないと思ってる?」 「え、当たり前でしょ?もう煌を苦しめる気なんてないんだから」 「じゃぁ俺は、どうしてあんなことを言われたんだろうな」 「あんなこと?」 寄りかかっていた玄関から身体を離して、ゆっくり私に近寄ってくる。 後ずさることもせずに、ただじっと煌の足取りを見つめていた。 「昨日、悠が先に病院を出たときに言われたんだよ」 ぐ、と爪が皮膚に食い込むほど強く握りしめられた両腕。 目の前には、噛みつきそうな激しい表情の煌。 「『初めて、女性の笑顔にドキッとした』って」 ………あ? えーっと、そんなに真剣な表情をして言われても、言っていることと表情がイコールで結ばれないと思うのは、私だけ? 私の感覚がやっぱりおかしい、だけ? 「ほら……やっぱりその顔。全然分かってない」 「全く分からないんですけど。その言葉のどこに怒る要素があるんでしょうか」 え、ちょ、何その大胆にほとんど冷却しきった顔つきは。 「やっぱり何にも分かってない!」 「だから、分かるように説明してってば」 「俺が言いたいのは!!」 声を荒立てた煌の言葉の先に待っていたのは。 「どうして兄さんに笑顔なんか見せたんだよってこと!!」 ますます意味が分からなくなっただけでした。 つまり、煌が怒っていたのは私が遼さんに私の笑顔を見せたってことで。 「……どうして見せちゃダメなの?」 「悠の笑顔であの女たらしが初めて心を奪われたからだよ!!!」 と、煌は言ってしまった後にハッとした表情で舌打ちをした。 あぁ………私はまた、めんどくさいことを起こしてしまったということか。 .
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