第3恋

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マックで私は飲み物だけを頼んで、席に着いた。 「で、大高は面談で何話したの?」 「そりゃやっぱり進路のことだろ。進路調査表にK大学って書いたんだ」 「へぇ~!K大学に行きたいんだ」 「あぁ。一応今の成績をキープなら行けるって言われたからよかったけど。油断はできないな」 「将来、何になりたいの?」 「まだ決まってない。だからK大学で探そうと思ってさ。すごくいいところなんだ」 「そっかぁ」 テリヤキチキンハンバーガーを食べる大高は、しっかり進路のことを考えているらしい。 「神崎はどうすんだよ?いよいよ誤魔化せない学年になったんだしさ。大学行け行けってうるさいんだろ?」 「そうなんだよねぇー……行く気全くないんだけど」 「音楽大学は?」 「音楽を仕事にする気はないから。趣味の1つでやっていればいいかなって」 「じゃぁ将来、何になりたいわけ?」 「さぁねぇ?何になりたいんだろう」 「神崎なら何でもなれそうだよな。ま、確かに選び放題だから迷うってのもあるか」 「いやいや、私そんな超人じゃない」 「は?思いっきり超人だけど」 本当に私、将来のこと何にも考えてないんだよなぁ。 今日の面談でもいろいろ言われそうだから今のうちに言い訳を考えておかないと。 「空雅も全然決まってないらしいぜ」 「あー、うん。言ってた言ってた。怒られたって。たぶんバカだから大学は行けないだろうし、卒業したら働くと思うよ」 「やっぱりそうだろうな。あいつ、働く精神はあるみたいだし」 「うん。ただお金が欲しいだけだと思うけどね」 『卒業』って言葉を初めて口にしたけれど、何だろうこれ。 すごく、胸がざわついた。 「ねぇ……愛花は内地の音楽大学に行くんだよね?」 「そうなのか?まぁちらっとは聞いたっけ。でも行けなさそうな雰囲気だったよな」 「もし、本当に内地に行ったら会えなくなるのかぁ」 「なんだよ神崎!突然しんみりしやがって」 しんみりしたんじゃなくて、“怖い”って思ってしまった。 今の生活が変わってしまうことが。 .
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